ICPE2019 学会報告
8月24日－28日に米国ペンシルベニア州のフィラデルフィアで開催された 35th International Conference on Pharmacoepidemiology & Therapeutic Risk Management（ICPE）の参加報告です。ICPEは薬剤疫学分野で最大規模の国際学会であり、アカデミア・企業・規制当局などから、大勢の専門家が参加しておりました。当分野からは教授 山口拓洋、助手 邱士韡の2名が参加しました。
前半の2日間は、教育セッションとして、例年通り“Introduction to Pharmacoepidemiology”などの初心者向けのコースから疾患領域や方法論に特化したトピックが用意されておりました。特に、Prospective Research: Tips & Tricks for Today's Technologiesというセッションでは、EHR（Electronic Health Record）やPRO（Patient Reported Outcome）、PGHD（Patient-Generated Health Data）に関する話題など、最新技術を用いていかに効率的に直接電子カルテや患者からデータを取得するかなどについて最新の議論がなされました。プログラム本体は、26日から3日間の日程で、ワクチンの安全性・有効性評価、小児や周産期の薬の安全性、データベース研究、当該領域の最新情報に関する多彩なプログラムが開催されました。
今回のキャッチフレーズ『Using Real World Data and Designs to Optimize Decisions』のもと、Keynote Session -The Role of Real- World Evidence In Regulatory Decision Makingをはじめ、レジストリ研究・電子カルテを用いた研究の妥当性、他国間のデータベースのバリデーション検証などのセッションが多く組まれていました。どんなにReal World Dataを利用しても、研究目的への「Fit-for-Use」を深く注意しないと、得られた結果はEvidenceにならないことを再度実感しました。プレナリーセッションImplementation and Evaluation of Risk Minimization Measures: Challenges and Opportunitiesでは規制当局からREMS（Risk Evaluation and Mitigation Strategy）について議論がなされ、また、Characterizing Patient Experience Data in Medical Product Development: What Is It, What Is Expected, and How Can You Contribute Based on Anticipated Regulatory Guidance? というセッションにおいては、患者から直接得られるデータをいかに医薬品開発や製販後調査ひいては臨床現場での利用に結びつけていくかなどが議論されました。印象的だったのが、薬剤疫学分野においても、Implementation Scienceの重要性が謳われていたことです。従来の古典的な疫学しか知らない研究者はこの数年できっと淘汰されるであろうと個人的には思ってしまいました。
ポスターセッションでは、当分野助手の邱が『How to Imply the Needs of Marginal Structural Model to Clinicians: An Application in Parkinson's Disease - From A Junior Statistician's Aspect -』と題して発表しました。内容は、モデルの構築より、コミュニケーションや結果の解釈方法を重視したものであったのもあり、統計家以外、臨床医や疫学者も意見交換に来られて、熱いディスカッションができました。
来年は、ドイツのベルリンにおいて、8月26日－30日の日程で開催予定です。
■写真■ ポスター発表の様子
筆頭発表者：邱 士韡（東北大学大学院医学系研究科 医学統計学分野 助手）
『How to Imply the Needs of Marginal Structural Model to Clinicians: An Application in Parkinson's Disease - From A Junior Statistician's Aspect -』
