ICPE2018 学会報告
8月22日－26日にチェコ共和国のプラハで開催された 34th International Conference on Pharmacoepidemiology & Therapeutic Risk Management（ICPE）の参加報告です。ICPEは薬剤疫学分野で最大規模の国際学会であり、アカデミア・企業・規制当局などから約1400名の専門家が参加しました。当分野からは非常勤講師 宮路天平、助手 邱士韡、D2 弘田紗瑛子の3名が参加し、邱と弘田がそれぞれポスター発表を行いました。
22－23日には、Pre-Conference Courseが開催され、4時間×2コマの教育セッションを2日間にわたり受講しました。講義内容は、“Introduction to Pharmacoepidemiology”や“ISPE Newcomers/Early Stage Investigator Pharmacoepidmiolgy Workshop 2018”といった初心者向けのものから、ワクチンや医療機器、希少疾患など特定の領域に特化したもの、傾向スコアなどの方法論に関するものまで幅広く用意されており、計25の講義から希望するものを選ぶことができました。癌のゲノム疫学に関するセッションでは、治療開始前の遺伝子解析により抗癌剤の有効性や副作用のハイリスク患者を予測する研究が紹介されました。このようなアプローチは患者の負担軽減、医療費削減等のメリットがあり、諸外国では官学を中心に積極的に研究が進められているとのことでした。
プログラム本体は、24日から3日間の日程で開催されました。ホットトピックとしてPrevalent new user designに関する講演や、ウェアラブルデバイス等によるPatient generated dataの薬剤疫学研究への応用について紹介された他、日本国内ではあまり聴くことができないワクチンの安全性・有効性評価、小児や周産期の薬の安全性に関するセッションが個別に組まれており、当該領域の最新情報を収集することができました。
機械学習に関するセッションでは、ウイルス性肝炎や肺癌のステージ判定に人工知能を利用した例が紹介されました。近年では、世界的に患者数が少なく診断がつかない希少疾病の診断や治療方法の選択、病因解明に当該技術を利用する例も報告されています。このような目的で人工知能を用いる意義は大きく、今後注力して研究を進めるべきとの意見がディスカッションの中で出されていました。医薬品副作用の検出や医療情報の匿名化等、様々な分野で機械学習を用いる動きがあることから、本領域の動向を注意深くフォローする必要があると感じました。
また、今年はGPSP省令改訂の影響があってか、日本からも多くのアカデミア・企業・規制当局関係者が参加されていました。口頭発表こそなかったものの、ポスターセッションでは日本から計19演題の出展があり、前年を大きく上回る発表数でした。製薬企業からの発表では、従来の使用成績調査と商用データベースを用いた観察研究の結果を比較した研究や、全例調査のデータを用いて安全対策の効果評価を行った研究等、医薬品製造販売後の安全対策をテーマとしたものも多く見受けられました。
来年は、米国ペンシルベニア州のフィラデルフィアにおいて、8月24日－28日の日程で開催予定です。
■写真１■ 分野関係者の集合写真（ポスターセッションの会場にて）
■写真２（左）■ ポスター発表の様子１
筆頭発表者：邱 士韡（東北大学大学院医学系研究科 医学統計学分野 助手）
『Dealing with time‐varying confounding by marginal structural model in observational study: An application in Parkinson's disease』
■写真３（右）■ ポスター発表の様子２
筆頭発表者：弘田 紗瑛子（東北大学大学院医学系研究科 医学統計学分野 D2）
『Factors Distinguishing Identified Risks from Potential Risks: Analysis of Safety Specification of Japan and EU Risk Management Plan』
■写真４■ 夕食会の様子
