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ニュース


台湾視察報告■2017年3月


2017年3月21日(火)-25日(土)、当分野の山口拓洋教授らが、台湾のデータベース研究と臨床研究支援に携わる各臨床研究関連施設(台灣国立衛生研究所、台湾大学病院、台湾大学健康情報研究センター、台湾大学病院臨床研究センター)を視察訪問しました。



【 目   的 】
台湾におけるデータベース研究と臨床研究支援の実態を把握し、日本の現状と比較する。

【 視 察 先 】
●台灣国立衛生研究所
http://english.nhri.org.tw/NHRI_WEB/nhriw001Action.do
●台湾大学病院
https://www.ntuh.gov.tw/en/default_p.aspx
●台湾大学健康情報研究センター
http://hdrc.ntu.edu.tw/
●台湾大学病院臨床研究センター
https://www.ntuh.gov.tw/en/NCTRC/default.aspx

【 参 加 者 】
■東北大学大学院 医学統計学分野
・教授 山口 拓洋 (Yamaguchi, Takuhiro)
・助手 邱  士韡 (Chiu, Shih-Wei)
■東北大学病院臨床研究推進センター
・助手 八重樫 寛子 (Yaegashi, Hiroko)
・助手 松浦 麻美子 (Matsuura, Mamiko)
■東京大学大学院医学系研究科 臨床試験データ管理学講座
・特任助教 宮路 天平 (Miyaji, Tempei)

【スケジュール】
3/21 仙台-東京(羽田)-台北(松山)
3/22 台湾大学病院(台北)施設見学
3/23 台灣国立衛生研究所(台北-苗栗、片道1.5時間)施設見学、意見交換会
3/24 台湾大学病院臨床研究センター(台北)施設見学、意見交換会
    台湾大学健康情報研究センター(台北)施設見学、意見交換会
3/25 台北(松山)-東京(羽田)-仙台



◎ 台湾大学病院~施設見学
台湾大学病院は1895年に創立された台湾大学医学部の診療教育研修病院です。現在では、病床は約2,400 床あり、主治医 600 名、その他 170 名、レジデント 1,000 名、看護師 2,500 名が在籍、その他検査技士、放射線技師、薬剤師のスタッフを併せると合計 6,000 名ほどが勤務されています。当日は、台湾大学薬学研究科の名誉教授であるShen-Yu, Hsin-Ying先生から台大医学人文博物館(Museum of Medical Humanities)を中心にご案内いただきました。台湾大学と日本の繋がりから、台湾の医学発展の歴史、公衆衛生に関する取り組みなどについて、詳しくご紹介していただきました。

台湾視察訪問!①
■写真1■
台湾大学病院旧病棟にて Shen-Yu,Hsin-Ying先生とともに


◎ 台湾国家衛生研究院~施設見学/意見交換会
台湾国家衛生研究院(National Health Research Institutes; NHRI)は、政府の行政院衛生署(Department of Health)の傘下として1996年1月に設置された非営利研究財団で、医学研究の強化と医療の改善を主目的として、活動されています。今回は、Division of Biostatistics and Bioinformatics, Institute of Population Health Sciences にて、グループリーダーであるHsiao, Chin-Fu 先生、Tsou, Hsiao-Hui 先生、Chang, I-Shou 先生、および、グループメンバー達とともに、お互いの組織のデータセンターを紹介し、ARO機能や各職種の役割分担、今後の展望などについて討論しました。

台湾視察訪問!②
■写真2■
Division of Biostatistics and Bioinformaticsにて Hsiao,Chin-Fu先生、Tsou,Hsiao-Hui先生、Chang,I-Shou先生 および グループメンバー達とともに


◎ 台湾大学病院臨床試験センター~施設見学/意見交換会
台湾大学病院臨床試験センター(National Taiwan University Hospital Clinical Trial Center; NCTRC)は、2005年に設立されて以降、学内の臨床研究支援をはじめ、企業との連携にも積極的に取り組まれています。また、当センターは、米国における倫理審査委員会の認証機構である Accredited from the Association for the Accreditation of Human Research Protection Program(AAHRPP)にも認証されています。当日は、National Clinical Trial & Research Center (NCTRC) と National Taiwan University Health Data Research Center (NTU HDRC) の責任者である Chan, K. Arnold 先生、国立陽明大学の合成生物学センターと情報通信センターの責任者であるYang, Ueng-Cheng 先生とともに意見交換会を行ないました。臨床研究の支援経験、データ管理システム、CDISCの対応などについて、大いに議論を深めました。特にデータ管理システムについては、米国のNIHが開発した、プロトコルから調査票、試験の検体など一括管理できるシステムCIMS(Clinical Informatics and Management System)、および、個人情報保護環境下で試験間の情報をリンク可能な個人識別子GUID(Global Unique Identifier)の概念などについて、Yang先生より貴重なお話を伺うことができました。

台湾視察訪問!③
■写真3■
台湾大学病院臨床試験センターにて Chan,K.Arnold 先生・Yang,Ueng-Cheng先生とともに


◎ 台湾大学健康情報研究センター~施設見学/意見交換会
台湾大学健康情報研究センター(NTU HDRC)は、2012年に設立され、学内外のデータベース研究を支援しています。台湾ナショナル健康保険データベース(National health insurance research database; NHIRD)にアクセスできる7つの大学拠点のうちの1つでもあり、行政官が駐在しています。ただし、利用申請の資格は、大学などの教育・学術機関が研究・学術目的で利用する場合に限定され、生データへのアクセスは厳格に管理されたデータ管理センター内のみで、サマリデータを持ち出す場合でも承認が必要となります。また、健康保険データを他データと連結して研究する場合、個人の識別性が高まることから審査確認がさらに大変厳しくなります。台湾では国民健康保険証、身分証、運転免許の番号は1つに統合されており、各データベース間の連携が比較的簡単です。このような背景もあり、台湾のデータベース研究は日本より進んでいますが、データの濫用などの問題も起こっています。今回は、Chan, K. Arnold 先生より、台湾のアウトカム研究の現状について伺うとともに、データベース研究等の品質マネジメント体制をどう構築していくかについて意見を交わしました。

台湾視察訪問!④
■写真4■
台湾大学情報研究センターにて Chan,K.Arnold先生とともに




【 ま と め 】
台湾のAROは、日本と同様に資源に限りがある環境下で臨床研究を支援し続けています。エフォートを最大限に利用するために、NHRIデータセンター等ではデータマネージャーという特化した職種はなく、生物統計家がデータマネジャーを兼務していました。また、拠点間連携もまだ模索中とのことで、AROの体制整備については日本でのノウハウをもっと聞きたいという要望もいただきました。
一方、台湾における全民健康保険は1995年に導入、2004年に健康保険証のICカード化が実施され、統合データベースを用いて、副作用等に関する迅速な分析が可能となっています。全民健康保険証の番号、GUIDの仕組み、および、データベース研究に関しては、先行した台湾の苦労や経験を学んで、本邦での今後の取り組みに大いに参考になることと思います。
今後も、NHRI、NCTRCおよびNTU HDRCの皆さんとともに議論を深めつつ、さまざまな連携も視野に入れながら、国際共同研究などに繋げていければと思います。